無報酬のボランティアは限界?部活動地域移行でアスレティックトレーナーの未来を守る方法

地域移行を進めるスポーツ庁の提言案とアスレティックトレーナーの役割

スポーツ庁の有識者会議が2022年5月31日に発表した提言案では、公立中学校の運動部活動を段階的に地域移行することが提案されました。この動きは、多くの現場で歓迎されており、アスレティックトレーナーや理学療法士にとっても大きな意味を持つものです。

提言案の概要

提言案のポイントは以下の通りです:

  1. 移行スケジュール
    来年度から段階的に進め、令和7年度末までに全国で達成を目指す。
  2. 移行先の候補
    移行先は、総合型地域スポーツクラブやプロスポーツチーム、大学などが想定されています。
  3. 指導者の資格と研修
    指導者には、資格取得や研修の促進が推奨されています。
  4. 地域大会の参加条件見直し
    地域単位での大会参加が可能となるよう、資格や条件の見直しが進められる予定です。
  5. 保護者の負担軽減
    費用については、保護者の大きな負担とならないよう配慮が求められています。
  6. 平日の移行
    休日の移行が完了次第、平日の活動移行も視野に入れられています。

ボランティア活動の難しさ

私は、約5年間にわたり、地域のバレーボールチームでアスレティックトレーナーとして活動してきました。活動のきっかけは、先輩理学療法士の誘いでしたが、バレーボール経験者ということもあり、無報酬でのボランティアとして携わっていました。週に2回、1回の練習は約3時間。遠征費やテーピング代、食費などもすべて自己負担でした。

最初は自己研鑽として意欲を持って取り組んでいましたが、年数が経つにつれ「この活動に対して、どれだけの時間と労力、そしてお金を費やすべきなのか」という葛藤が生まれました。無報酬のボランティア活動を続けるモチベーションを保つのは決して簡単ではありません。

アスレティックトレーナーとしての報酬

部活動の地域移行が進む中で、重要な課題の一つは、アスレティックトレーナーやその他の専門職が適切な報酬を得られるかどうかです。私自身、地元の学校にトレーナーとして活動できないか打診した際、どの学校からも「報酬は出せないが、それでも良ければどうぞ」と言われました。このような状況が続く限り、専門的な知識や技術を持つトレーナーが持続可能な形で活動を続けるのは難しいでしょう。

地域移行の課題

地域移行が進むにあたり、課題は大きく「人」「物」「金」に集約されます。特に、報酬を巡る問題は重要です。2020年の東京オリンピックでは、メディカルスタッフを無報酬のボランティアとして起用することが大きな議論を呼びました。結果的には多くの医療従事者が参加しましたが、こうしたボランティア活動が長期的に続けられるかは疑問です。

今後の展望

部活動の地域移行を進める上で、アスレティックトレーナーとしての役割はますます重要になります。しかし、ボランティア活動が基本となっている現状では、モチベーションの維持が難しく、持続可能な活動には報酬の確保が不可欠です。

また、学校教員との相互理解を深めることも大きな課題です。トレーナーとしての専門性や役割を理解してもらい、円滑な連携ができる環境を整えることが必要です。

まとめ

アスレティックトレーナーとして活動する中で、地域移行は非常に重要な取り組みですが、報酬や認識の課題が残されています。今後の展望として、トレーナーが持続可能な形で活動できる環境を整備し、学校との連携を深めることが求められています。持続可能な活動を目指すために、私たち専門職が何を求め、どのように動いていくべきかを今一度考える必要があります。

この提言案をきっかけに、アスレティックトレーナーとしての未来を見据えていきましょう。

関連サイト

公益社団法人日本理学療法士協会 国民の皆さま向けトップ

公益社団法人 日本理学療法士協会の公式サイトです。協会に関する様々な情報をご紹介します。

JSPO 日本スポーツ協会

わが国におけるスポーツ統括団体「JSPO(日本スポーツ協会)」の公式サイト。国民体育大会や日本スポーツマスターズの開催、スポーツ少年団の運営など。

スポーツ庁ホームページ

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