理学療法士が陥りがちなマルチ商法の落とし穴:100個リストの罠とは?

はじめに

理学療法士として働いていると、患者さんのリハビリ計画だけでなく、ご自身のキャリアアップや生活設計にも常にアンテナを張っている方が多いのではないでしょうか。最近ではSNSや知人から「マルチ商法(MLM)のセミナーに参加してみない?」と勧誘を受けるケースも増えているようです。

そうしたMLMセミナーでは、「お金でやりたいことを100個書いてみましょう」と言われることがあります。一見すると夢を膨らませる良いチャンスに感じますが、実際に100個リストアップするのは予想以上に難しく、多くの人が途中で行き詰まってしまうものです。
本記事では、なぜ100個も思いつかないのか、その背景やマルチ商法セミナー側の狙い、そして理学療法士としてのキャリアや価値観と照らし合わせて考えてみたいと思います。

1. “100個リスト”が意外に埋まらない理由

1-1. 物質的な欲望だけでは足りない

「一度は豪華な海外旅行に行きたい」「最新の車が欲しい」など、パッと思いつく“お金を使いたい目的”はいくつかあります。しかし“100個”という数を埋めようとすると、いきなりハードルが上がります。そもそも人間の欲求は、物質的なモノだけで満たされるわけではありません。
理学療法士の仕事は、患者さんの身体機能回復をサポートするうえで、“人の役に立つこと”や“社会貢献”という側面が大きなモチベーションです。そこにはお金だけでは測れない充実感もあるでしょう。「お金でやりたいこと」とは別次元のやりがいを日々感じられる仕事だからこそ、物質的な欲望ばかりを並べるのは難しく感じるのかもしれません。

1-2. 自己分析が必要だが難易度が高い

100個もの“欲望リスト”を埋めるには、自分の価値観をしっかり分析し、“夢の解像度”を高める必要があります。

  • どんな場所で暮らしたいのか
  • どんな人と関わり、何を分かち合いたいのか
  • 将来的にどのようなスキルを磨いていきたいのか

これらを具体的にイメージしなければ、リストアップははかどりません。ですが、理学療法士は日々の臨床業務や勉強会に追われ、なかなか自分の将来を深く考える時間を取りにくい現実もあります。そのため、いざ“お金でやりたいこと”を細かく出すとなると、自分が本当に欲していることが明確にならず、途中で止まってしまうのです。

2. マルチ商法セミナー側の狙い

2-1. “まだまだ足りない”感を植え付ける

マルチ商法のセミナーでは、参加者に大量の夢や目標を書き出させることで「自分の現在の収入や環境では到底すべてを実現できない」と感じさせる狙いがあります。「もっとお金があれば、これらの夢が叶うのに…」という意識を強めることで、ビジネス勧誘をスムーズに行いたいわけです。

2-2. “お金=幸せ”と思わせる心理操作

セミナーの場では、「お金さえあれば、すべて解決できる」「自由な時間を手に入れるには、稼がないと始まらない」などのフレーズが頻繁に登場します。しかし、理学療法士として働いている方ならご存じの通り、人の幸せは必ずしもお金だけでは測りきれません。やりがいや人間関係、健康や自己成長といった要素は、お金では買えない価値をもっています。

3. 理学療法士のキャリアと“お金”のバランス

3-1. 年収アップの方法を多角的に検討する

もちろん収入面を向上させたいと考えるのは、誰にでもある自然な欲求です。理学療法士の場合、以下のような選択肢もあります。

  • 転職やステップアップによる昇給(専門・認定理学療法士の取得)
  • フリーランス理学療法士として働く
  • セミナー講師や執筆活動など副業を行う

このように自分のスキルや知識を活かして収入を増やす道は多岐にわたります。短絡的にMLMビジネスへ飛び込む前に、他の手段でキャリアアップを模索する方が、理学療法士の専門性を活かした安定的な収益につながりやすいでしょう。

3-2. 本当に欲しいものを明確にする

「自分が本当に欲しいものは何か?」を改めて考えてみるのは大切です。仕事の専門性を高め、より多くの患者さんの役に立ちたいのか、プライベートの時間を充実させたいのか、あるいは高収入を実現して経済的自由を得たいのか――。
理学療法士としての日々のやりがいを軸にしながら、自分に合った形で収入アップを図る方法を探す方が、長期的に見て幸せなキャリアにつながるはずです。

4. “100個リスト”を有意義に活用するコツ

「お金でやりたいことを100個書く」作業自体が悪いわけではありません。むしろ、正しい目的のもとで行えば自己分析に役立ちます。

  • お金で解決することだけでなく、お金がなくてもできることもセットで書く
  • 大きな夢や目標を、具体的なタスクに細分化して書き出す
  • “自分の人生をより豊かにするには何が必要か”を本音ベースで考える

こうした視点を持って取り組めば、単に「高級品を欲しいだけ並べるリスト」ではなく、自分にとって本当の意味で価値ある目標を見つける手がかりになります。

おわりに

理学療法士として日々患者さんのために尽力されている皆さんにとって、キャリアもお金も大切なテーマだと思います。ただ、マルチ商法セミナーがよく使う“100個リスト”は、時に参加者の不安をあおってビジネス勧誘につなげる仕掛けでもあります。

一度、落ち着いて自分自身の本当の欲求や将来像を見つめ直してみましょう。理学療法士としての専門性を活かすキャリアアップや副業は複数存在しますし、どの選択肢があなたに合っているかは人それぞれです。

大切なのは、“自分の幸せ”を軸に考え、行動すること。お金を稼ぐ方法はたくさんありますが、理学療法士という専門性とやりがいを損なわずに、より豊かな人生を築ける道を模索していきましょう。

関連サイト

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公益財団法人日本パラスポーツ協会(JPSA)

日本パラスポーツ協会(JPSA)は、国内における三障がいすべてのスポーツ振興を統括する組織で、障がい者スポーツ大会の開催や奨励、障がい者スポーツ指導者の育成、障がい者のスポーツに関する相談や指導、普及啓発などを行っています。