報酬は少ないけどやりがいMAX!理学療法士が語るパラスポーツのリアル

パラスポーツに関わる理学療法士のリアル──遠征費は自腹で、報酬面もまだまだ不足?

外来患者さんのリハビリテーションを行う日々ですが、実は数年前からパラスポーツのトレーナー活動にも携わってきました。

私がパラスポーツの世界に飛び込んだきっかけは、先輩理学療法士からの一言でした。

当時はパラスポーツの知識がほぼゼロだった私。しかし、好奇心と「少しでも障がいを持つ方のお役に立てるなら」という思いが後押しして、先輩の誘いを受けることにしました。とはいえ、実際に活動を始めると、いろいろな現実に直面することになります。そこで本記事では、パラスポーツに関わる理学療法士のやりがいから、なかなか語られない報酬面や遠征費の実情までを、私の体験を通じてお伝えしたいと思います。

パラスポーツに関わるメリットとやりがい

1. 障がいの特性に合わせたリハビリ知識が活かせる

パラスポーツ選手はさまざまな障がいや持病を抱えています。競技特性や義足・車いすなどの用具調整を踏まえたうえでのケアプランやフィジカルサポートが求められるため、理学療法士としての専門知識が非常に活きる場面が多いです。健常者スポーツとは違う視点が必要になるので、臨床に戻ったときにも多角的なアプローチができるようになります。

2. 新しい競技スキルや用具調整を学べる

パラスポーツでは用具や競技ルールが独特で、車いすバスケットボールやブラインドサッカーなど、それぞれに応じた技術やケア方法があります。たとえば車いすの調整一つで選手のパフォーマンスが大きく変わるため、用具メーカーやコーチとも連携しながら最適解を探るのは、とてもやりがいがあります。

3. 患者さんへのアプローチにも深みが出る

パラスポーツでのサポートは、障がいのある方との関わり方やコミュニケーションなどを直接的に学ぶ機会でもあります。リハビリの基本に加え、個々の身体機能に最適化したトレーニングプログラムを組む力が身につくため、病院での臨床でも活かせる幅が広がると感じています。

正直、報酬はまだまだ日頃から活動するには不十分

1. ほぼボランティア状態から始まる

健常者スポーツと比べて、パラスポーツの運営資金は圧倒的に少ないのが現状です。私自身も、チームからの報酬はごくわずかで、ほぼボランティアとしてスタートしました。もちろん医療や福祉の助成制度などはあるものの、日常の活動費をまかなえるほど充実しているとは言えません。

2. 遠征費・宿泊費は自己負担が基本

他県や遠方で行われる試合に帯同する際、交通費や宿泊費は自腹になることがほとんどでした。最初は「え、そこまで負担が必要なの!?」と驚きましたが、チーム自体に予算がなく、スタッフの人件費が出せないのが当たり前。理学療法士として日々働いている身でも、なかなかの出費でした。

3. 将来的には改善の兆しも

パラリンピックの注目度が高まるにつれ、スポンサーや企業とのタイアップが増える可能性があります。実際、私の周囲にも企業支援を得て、トレーナーへの報酬を一定程度保証してもらえるようになったパラスポーツチームもあります。とはいえ、まだ数は少なく、安定した報酬を得るには時間がかかりそうです。

それでもパラスポーツに関わりたい理由

  1. 選手の笑顔と感謝に勝るモチベーションはない
    選手が心から楽しみながら競技している姿を近くで見ると、こちらも自然と笑顔になれます。試合後に「ありがとう!」と言われると、どんな苦労も吹き飛んでしまうほどのやりがいを感じます。
  2. 理学療法士としての成長
    パラスポーツ特有の条件に対応するために、リハビリテーションやトレーニングの知識を総動員します。日常臨床にも新たな視点を持ち込むことができ、理学療法士としての成長を実感できます。
  3. 今後の社会的意義・インクルーシブな社会づくり
    世の中のインクルーシブ化が進むなかで、障がいを持つ方のスポーツ参加は重要なテーマです。そこに理学療法士として関わることで、医療とスポーツの架け橋として社会貢献できる可能性を感じています。

パラスポーツに関わりたい理学療法士へのアドバイス

  1. まずは周囲の先輩や知人に声をかけてみる
    私の場合、きっかけは先輩理学療法士の誘いでした。「パラスポーツに興味がある」と周囲に伝えておくことで、想像もしていなかったご縁が生まれることがあります。
  2. ボランティアや講習会で現場を体験する
    大会やチームでトレーナーやスタッフのボランティア募集をしていることも多いです。いきなり長期参加は難しくても、週末だけならチャレンジしやすいでしょう。実際に現場を知ることで、自分に合うかどうかイメージしやすくなります。
  3. スケジュール調整と体力管理を徹底する
    病院勤務との両立をするためには、仕事と試合帯同のスケジュール管理が不可欠です。練習や試合日は土日だったり早朝だったりするので、事前に休暇申請やシフト調整をしておくことをおすすめします。
  4. 情報発信とネットワークづくり
    同じ想いを持つ理学療法士やアスリハ関係者とのつながりは、今後の活動を広げるために大切です。SNSや勉強会などを活用して、積極的に情報交換や発信を行いましょう。

まとめ:一歩踏み出すと見えてくる、パラスポーツの未来

報酬面ではまだまだ日頃から活動するには不十分なパラスポーツの現場。それでも、一度その世界をのぞいてみると、選手が放つエネルギーや成長の瞬間に心を打たれ、自分自身も理学療法士としてレベルアップできる魅力を感じられるはずです。

私も最初は、先輩理学療法士からの誘いに戸惑いながらスタートしましたが、今では「やってみて本当によかった」と思える経験になっています。遠征費が自己負担でも続けたいと思えるほどに、パラスポーツには他では得られないやりがいが存在しています。

もしこの記事を読んで「ちょっと興味が出てきた」「いつか関わってみたい」と感じたら、ぜひ最初の一歩を踏み出してみてください。あなたの専門知識やサポートを必要としているパラスポーツのチームや選手は、きっとたくさんいるはずです。

関連サイト

公益社団法人日本理学療法士協会 国民の皆さま向けトップ

公益社団法人 日本理学療法士協会の公式サイトです。協会に関する様々な情報をご紹介します。

https://www.japan-sports.or.jp

公益財団法人日本パラスポーツ協会(JPSA)

日本パラスポーツ協会(JPSA)は、国内における三障がいすべてのスポーツ振興を統括する組織で、障がい者スポーツ大会の開催や奨励、障がい者スポーツ指導者の育成、障がい者のスポーツに関する相談や指導、普及啓発などを行っています。