
パーソナルトレーニングの乱立で質の低下が懸念される現状と注意点
コロナ禍で健康志向が高まる中、パーソナルトレーニング市場は急成長しています。しかし、その急速な拡大に伴い、トレーニングの質が低下し、怪我や体調不良に繋がるケースも増えていることが懸念されています。
国民生活センターからの注意喚起
2022年4月21日、独立行政法人国民生活センターは「パーソナル筋力トレーニングでのけがや体調不良に注意!」という報告書を公表しました。これにより、パーソナルトレーニングを通じて運動不足を解消しようとする人々が、逆に怪我や体調を崩すリスクが高まっていることが浮き彫りになりました。
私自身、トレーナーとして活動しながら、整形外科で外来リハビリテーションに従事している立場から、トレーニングの質が低下している実態に非常に危機感を抱いています。特に、パーソナルトレーニングで体を痛めた後に診察を受けに来る患者さんが増えていることが印象的です。
トレーニングによる怪我の実態
私が勤務する整形外科でも、学生や一般の方がパーソナルトレーニングで腰痛やヘルニアなどの怪我を負い、診察を受けに来るケースが多く見られます。特に、バーベルを使ったレジスタンストレーニングでのスクワット中に腰を痛めたという報告が目立ちます。
多くの患者さんが、「トレーナーはいたけれど、姿勢や負荷の指導を受けたことはない」と話しており、明らかに適切なサポートが不足していることが伺えます。
美容業界からのパーソナルトレーニング参入への懸念
最近、個人的に懸念しているのは、美容業界からパーソナルトレーニング業界への参入が増えていることです。私自身も美容業界が運営するヘアサロンとパーソナルトレーニングジムを兼ね備えた施設に関わった経験があり、その施設でのリスク管理の欠如に大きな危機感を覚えました。
トレーナーは一見、誰でも簡単に名乗ることができる職種のように思われがちですが、適切な知識や技術がなければ逆に怪我や体調不良を引き起こすリスクが高まります。
パーソナルトレーニングを受ける際の注意点
日本では、トレーナーの立場はまだ確立されておらず、主に民間資格のみで成り立っています。そのため、トレーナーの技量や知識にばらつきがあり、利用者が質の低い指導を受ける可能性があります。
パーソナルトレーニングジムを利用する際は、以下の点に注意して選ぶことが重要です。
- トレーナーが有名なトレーニング資格を保持しているか
有名な資格を保持しているトレーナーは、一定の基準をクリアした知識と技術を持っていることが期待できます。 - トレーニング前にしっかりと問診・検査が実施されているか
トレーニングを始める前に、トレーナーがあなたの体の状態を正確に把握しているかどうか確認しましょう。これにより、個別のニーズに応じた安全なプランが提供されるはずです。 - トレーニング中に細かな指導が行われているか
トレーニング中の姿勢やフォーム、負荷量などの適切な指導は、怪我を防ぐために不可欠です。これらが不十分な場合、トレーニングの効果も半減し、怪我のリスクも高まります。
安全なトレーニングを選択するために
パーソナルトレーニングを受ける際には、信頼できるトレーナーを選ぶことが最も重要です。特に、トレーニングの質が乱立する市場の中で低下している現在、自分自身の体を守るためにも、しっかりとした知識と経験を持つトレーナーを選びましょう。運動不足を解消し、健康を維持するために始めたトレーニングが、逆に健康を損なう結果にならないよう、慎重に選択することをお勧めします。
これからパーソナルトレーニングを始めようと考えている方は、上記のポイントをしっかりと確認して、安心して取り組める環境を整えることが大切です。正しい知識を持ったトレーナーとの出会いが、健康的な体作りへの第一歩となります。
関連サイト
JSPO 日本スポーツ協会
わが国におけるスポーツ統括団体「JSPO(日本スポーツ協会)」の公式サイト。国民体育大会や日本スポーツマスターズの開催、スポーツ少年団の運営など。