バキバキ動画に要注意:首捻り施術事故から学ぶ理学療法士の責任と心得

世界が震えた首マッサージ死亡例が示す、理学療法士のための安全基準見直し

昨今、YouTubeやSNS上で「首を捻る」「バキバキ鳴らす」など、過剰な手技パフォーマンスが拡散される中、プロとして患者様の安全を最優先すべき理学療法士や整体従事者に、改めて危険性を考えていただきたい事例が発生しました。タイで女性歌手が「首を捻るマッサージ」を受けた後、全身麻痺の症状を経て最終的に死亡したという報道が世界中を駆け巡っています。この痛ましいケースは、適切な知識と技術が欠如した状態で行う強引な頸椎操作が、取り返しのつかない結果を生み出しかねないことを示しています。本記事では、この事例をもとに「施術リスクへの認識強化」と「SNS発信時の過剰演出の戒め」をテーマに、理学療法士や整体院経営者・従事者に向けた再考のポイントをお伝えします。

タイの事例が示した頸椎操作リスク

先日報じられた事例では、20歳のタイ人女性歌手が数回にわたる首を激しく捻るマッサージを受けた後、手足の麻痺・強い痛み・全身の硬直へと症状が進行。最終的には血液感染や脳浮腫により死亡に至りました。タイ保健当局は、このような施術が標準的な伝統マッサージの範囲を逸脱していた可能性を指摘しており、不適切な頸部操作による血管・神経損傷リスクを再び浮き彫りにしています。

プロフェッショナルとして守るべきライン

理学療法士や整体従事者は解剖学・運動学的な知識に基づき、患者一人ひとりの状況に合わせた安全な手技を提供する義務があります。頸椎や脊椎周辺は脳へ通じる重要な血管・神経が密集している部位です。過剰な力や不適切な角度での操作は、軽度な神経圧迫に留まらず、致命的な血管損傷や神経断裂を引き起こす危険性を常に念頭に置かなければなりません。

SNS映えを求める過剰パフォーマンスへの注意

YouTubeやTikTok、InstagramなどSNSで「瞬間的な快感」や「派手な関節音」をアピールする動画が数多く拡散されています。こういった「バキバキ整体」風のパフォーマンスはエンタメ性が高く、閲覧者数を増やしやすいため、施術者側がつい演出過多に走ってしまうケースが見受けられます。しかし、プロとしては「安全第一」であることを忘れてはなりません。
SNSは発信者が簡単に自分のブランドを拡大できる場である一方、適切な資格要件やエビデンスを経ずに過激な映像を発信すると、その手法を真似した未経験者や誤った知識を持つ施術者が増える可能性があり、業界全体の信頼性低下にもつながります。

患者様との信頼を築くには

安全で効果的な施術を行い、その過程を正しい情報で発信することは、患者様との信頼関係を育むうえで不可欠です。施術動画を公開する際には、施術意図や解剖学的根拠、適応・禁忌についての説明を添えることで、視聴者のリテラシー向上にも貢献できます。
また、独自技術のアピールに固執するのではなく、適切な国家資格や学術的エビデンスに裏打ちされた安全な手技を行うことで、専門家としての評価を高めることが可能です。

安全な施術を徹底するためのポイント

  1. 正確な解剖・運動学的知識:頸部構造や血管・神経走行を再確認し、不用意な強度で首を捻らない。
  2. 患者評価の徹底:問診や触診、ROMテストにより、首周りの病変や既往歴を確認。ハイリスク患者には過度な力学的負荷を行わない。
  3. 権威ある学会・学術リソースの活用:常にアップデートされた学術情報を取得し、安全基準の遵守を徹底する。
  4. SNS発信の慎重な運用:痛々しい音や強引な操作を過剰に演出しない。視聴者教育となる解説を丁寧に添える。

まとめ:プロとしての品位と責任

今回の悲劇的なケースは、施術者側の不用意な頸椎操作が、患者の命さえも奪い得ることを再認識させました。理学療法士や整体従事者は、過剰なパフォーマンスや映え重視のSNS戦略に走ることなく、患者第一の姿勢と科学的根拠に基づく手技を守り続ける必要があります。
こうした積み重ねが、患者様との信頼構築、そして業界全体の健全な発展へとつながっていくのです。

関連サイト

公益社団法人日本理学療法士協会 国民の皆さま向けトップ

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JSPO 日本スポーツ協会

わが国におけるスポーツ統括団体「JSPO(日本スポーツ協会)」の公式サイト。国民体育大会や日本スポーツマスターズの開催、スポーツ少年団の運営など。

公益財団法人日本パラスポーツ協会(JPSA)

日本パラスポーツ協会(JPSA)は、国内における三障がいすべてのスポーツ振興を統括する組織で、障がい者スポーツ大会の開催や奨励、障がい者スポーツ指導者の育成、障がい者のスポーツに関する相談や指導、普及啓発などを行っています。