
- 1. はじめに
- 1.1. 1.オンラインカジノ事件の概要
- 1.1.1. オリンピックメダリストの違法賭博疑惑
- 1.1.2. “違法だと知らなかった”では通用しない
- 1.2. 2.オンラインカジノはなぜ違法なのか?
- 1.2.1. 国内外を問わず日本の法律が適用される
- 1.2.2. 広告やSNSの影響
- 1.3. 3.アスレティックトレーナーの視点:リスク管理と選手教育
- 1.3.1. 1.コンプライアンス教育のサポート
- 1.3.2. 2.メンタルトレーニングとの連携
- 1.3.3. 3.自らのコンプライアンス意識を高める
- 1.4. 4.再発防止に向けたポイント
- 2. 5.まとめ:選手を守るのもATの大切な役割
はじめに
近年、選手のSNS利用やオンライン広告を通じて「海外のオンラインカジノ」を目にする機会が増えています。つい先日、東京オリンピックの銅メダリストで卓球Tリーグの選手が海外オンラインカジノに関与し、書類送検されたニュースが大きく報じられました。
アスレティックトレーナー(以下、AT)は選手の身体的サポートのみならず、メンタル面やコンプライアンス面でのケアにも携わる機会が多くなっています。今回は、オンラインカジノと賭博の違法性、日本国内でのリスク、そしてアスレティックトレーナーが選手を守るために何ができるのかを考えてみましょう。
1.オンラインカジノ事件の概要
オリンピックメダリストの違法賭博疑惑
卓球のTリーグチーム「岡山リベッツ」に所属していた選手が、海外のオンラインカジノサイトを利用して違法賭博を行った疑いで書類送検されました。賭け金は暗号資産を通じて数千万円にものぼるとみられており、これが発覚したことでチームは選手との契約を解除し、チーム代表や監督にも減俸処分が下されました。
“違法だと知らなかった”では通用しない
問題となった選手は「違法だとは認識していなかった」と話しています。しかし、日本の刑法ではオンラインカジノを含む賭博は原則禁止されており、「知らなかった」という主張では免責になりません。海外のサーバーを利用していたとしても、日本国内からアクセスし賭博を行えば違法性が成立する可能性が高いのです。
2.オンラインカジノはなぜ違法なのか?
国内外を問わず日本の法律が適用される
日本の刑法では、賭博行為は競馬や競輪など特別に法律で認められた公営ギャンブルを除き、原則として違法です。海外の運営サイトであっても、日本国内にいる利用者が参加すれば、日本の法律が適用されることになります。
広告やSNSの影響
SNSやウェブ広告で「日本向け」「安全」とうたっているオンラインカジノも散見されますが、それらは“日本国内で合法”という根拠にはならない点に注意が必要です。選手がそうした広告を見て誤った情報を得る可能性も否定できません。
3.アスレティックトレーナーの視点:リスク管理と選手教育
アスレティックトレーナーは、選手の身体・メンタルをケアする立場として“リスクの早期発見・予防”にも目を向ける必要があります。違法賭博に限らず、選手のコンプライアンス違反はチーム全体の士気やスポンサーシップにも影響し、ひいてはアスレティックトレーナー自身のキャリアにも波及することがあります。
1.コンプライアンス教育のサポート
- ミーティングの実施
監督やコーチ、チーム管理部門と連携して「違法賭博」「薬物使用」「SNSトラブル」など、起こりうるリスクをまとめたミーティングを定期的に開催しましょう。 - 情報共有
違法賭博の事例や法律の最新情報を収集し、選手が誤解しないような資料や動画を用意するなどのサポートを行うと効果的です。
2.メンタルトレーニングとの連携
- ストレス管理
選手が違法賭博に走る背景には、ストレスや退屈、好奇心などが潜んでいるケースもあります。カウンセラーやスポーツ心理学の専門家と連携し、選手のメンタル面を把握する体制を整えるとよいでしょう。 - 居場所づくり
チーム外の友人や家族との交流機会が少ないと、オンラインの娯楽に依存しやすくなることがあります。オフの日の過ごし方や趣味活動のサポートも、トラブル回避に役立ちます。
3.自らのコンプライアンス意識を高める
- ロールモデルとしての行動
選手と近い距離で接するアスレティックトレーナーが、まずは法律・倫理観をしっかり理解しておくことが必要です。 - 法的リスクへの理解
アスレティックトレーナー自身が「海外サイトだから大丈夫」という誤った認識を持たないよう、トレーナー向けのセミナーや研修を受けることも重要です。
4.再発防止に向けたポイント
- 情報発信を強化する
チームや団体が公式に「オンラインカジノの違法性」や「賭博罪のリスク」について周知する機会を増やす。 - 相談窓口の設置
「もしトラブルや不安があれば、匿名でも相談可能」というサポート体制を作り、選手が早めに相談しやすい環境を整える。 - 専門家との連携
弁護士やスポーツ法に詳しいコンサルタントを紹介しておくなど、万が一のトラブルにも迅速に対応できるようにしておく。
5.まとめ:選手を守るのもATの大切な役割
アスレティックトレーナーは、選手の体調管理やリハビリ指導だけでなく、「コンプライアンスリスクから選手を守る」という新たな役割を担いつつあります。
オンラインカジノによる違法賭博のリスクは、今回のニュースをきっかけに多くのスポーツ関係者が再認識することになりました。今後は、より一層「法的知識のアップデート」が求められます。選手が安心して競技に打ち込めるよう、定期的な情報共有やカウンセリング体制の充実を図り、万全のサポート体制を築いていきましょう。
関連サイト
JSPO 日本スポーツ協会
わが国におけるスポーツ統括団体「JSPO(日本スポーツ協会)」の公式サイト。国民体育大会や日本スポーツマスターズの開催、スポーツ少年団の運営など。
公益財団法人日本パラスポーツ協会(JPSA)
日本パラスポーツ協会(JPSA)は、国内における三障がいすべてのスポーツ振興を統括する組織で、障がい者スポーツ大会の開催や奨励、障がい者スポーツ指導者の育成、障がい者のスポーツに関する相談や指導、普及啓発などを行っています。