理学療法士はカモにされる!? SNS発信力を狙うマルチ商法の罠と対策

影響力のある理学療法士が狙われる理由——マルチ商法と詐欺の巧妙な手口

はじめに

近年、理学療法士という専門職にもSNSでの情報発信や副業の波が押し寄せており、「影響力のある専門職」として注目を集める存在も増えてきました。フォロワー数が多く、信頼されている理学療法士ほど、実はある種の“カモ”として狙われやすい傾向にあります。その代表例が「マルチ商法(ネットワークビジネス)」に絡んだ詐欺的な勧誘です。

今回は、なぜ発信力のある理学療法士がマルチ商法の詐欺師に狙われやすいのか、その理由と手口、そして被害を未然に防ぐための具体的な対策について掘り下げていきます。

1. 発信力が“レバレッジ”になる

SNSでフォロワーが多い、YouTubeで発信している、院内外で信頼されている——こうした“影響力”は、マルチ商法において極めて魅力的な存在です。なぜなら、影響力を持つ人が勧めることで、詐欺的な商材やビジネスがあたかも「信頼できるもの」として受け入れられやすくなるからです。

特に、理学療法士のような国家資格を持つ専門職が発信する内容は「医療従事者が言っているなら安心」という印象を持たれやすく、詐欺師にとっては非常に“コスパの良い”広告塔なのです。

2. 信頼の“肩代わり”が行われる

マルチ商法においては、信頼の“移転”が極めて重要な戦略です。詐欺師自身がどれだけ実績を語っても信用されない場合でも、影響力のある理学療法士が「これはいい」「実際にやってみて効果を感じた」と言うだけで、瞬く間に信頼が広がっていきます。

ここで恐ろしいのは、自分の発言が知らないうちに誰かの損害に直結する可能性があるということです。

3. 甘い言葉と“承認欲求”の刺激

「あなたのような発信力のある方に、特別なポジションを用意しています」 「紹介するだけで月に◯万円の権利収入が入る」 「成功者だけが集う非公開グループに招待します」

このように、インフルエンサーや目立つ存在を“特別扱い”するのが詐欺師の常套手段です。理学療法士として職場で評価されづらかったり、頑張っても報われない環境にいる場合、こうした言葉が響きやすくなってしまいます。

4. 自分では見抜きにくい収益構造

マルチ商法の多くは複雑な仕組みを持っており、「紹介者の紹介者」からも収益が発生するなど、一般的なビジネスモデルとは一線を画します。この複雑さが“よくわからないけど儲かりそう”という幻想を生みます。

理学療法士のように日々忙しく臨床に携わっている人にとって、深く調べる時間がなかったり、「信頼している人からの話だから」と安易に参加してしまうリスクも。

5. ノーと言いづらい“関係性”の罠

勧誘の多くは、信頼関係がある人を通じて行われます。「以前お世話になった先輩」「学生時代の同級生」「研修で出会った仲間」など、断りづらい関係性を利用してきます。また、「無料セミナー」や「高級ホテルでのランチ会」といった“先に何かを与える”ことで、断りにくい空気をつくる返報性の心理も使われます。

6. 影響力のある人が“黙ってしまう”理由

さらに厄介なのが、仮にそのビジネスが破綻したり、フォロワーに損害が出たとしても、紹介した理学療法士自身が「自分の信用を守るために黙る」ケースが少なくないことです。

自分の職業的信頼、患者や後輩からの評価、今後のキャリアへの影響を恐れ、失敗や詐欺に加担してしまったことを表に出せず、結果的に“なかったことにする”というサイレント化が起こります。

7. 理学療法士としてのリスク

・患者への信頼毀損 ・職場での評価低下 ・就業規則違反や副業禁止の可能性 ・SNSでの炎上 ・将来的な法的トラブル(景品表示法、特商法など)

医療従事者である理学療法士が金融商材や物販、マルチ商法に関与することは、社会的な影響力の大きさを考慮すれば致命的なリスクを伴います。

8. 声をかけられたときの対策

・「元本保証」「リスクなし」などの言葉が出たら即撤退 ・会社名、法人登記、代表者を検索し、実在性を確認 ・契約書の提示を求める(口頭説明だけはNG) ・第三者(弁護士、税理士、協会)に相談する ・「職業倫理上、副業での勧誘はできません」と毅然と伝える

まとめ

発信力のある理学療法士は、その信頼性ゆえに詐欺師からターゲットにされやすい存在です。「自分は大丈夫」と思っている人ほど危ないのが、詐欺の怖さです。

マルチ商法の詐欺は、表面上は魅力的なビジネスチャンスに見えるかもしれません。しかし、その裏側には巧妙な心理戦と搾取の構造があります。

あなた自身と、あなたの信頼を寄せてくれる患者・同僚・フォロワーを守るためにも、「発信力を使って“誰かを巻き込む責任”」を今一度見つめ直す必要があります。

安易に「紹介すれば儲かる」という話には飛びつかず、医療専門職としての倫理と冷静な判断力を持って、自分と周囲の人々を守っていきましょう。

関連サイト

公益社団法人日本理学療法士協会 国民の皆さま向けトップ

公益社団法人 日本理学療法士協会の公式サイトです。協会に関する様々な情報をご紹介します。

JSPO 日本スポーツ協会

わが国におけるスポーツ統括団体「JSPO(日本スポーツ協会)」の公式サイト。国民体育大会や日本スポーツマスターズの開催、スポーツ少年団の運営など。

公益財団法人日本パラスポーツ協会(JPSA)

日本パラスポーツ協会(JPSA)は、国内における三障がいすべてのスポーツ振興を統括する組織で、障がい者スポーツ大会の開催や奨励、障がい者スポーツ指導者の育成、障がい者のスポーツに関する相談や指導、普及啓発などを行っています。